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溶接とは?/ ディック

[ 1268] 溶接 - Wikipedia
[引用サイト]  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%BA%B6%E6%8E%A5

溶接(ようせつ、英語:welding)とは、2つ以上の部材を溶融・一体化させる作業である。接着とはまったく異なる。接合箇所が連続性を持つように、部材を加熱したり圧力を加え接合部を融合させる。かつては鎔接や熔接の文字が利用されていたが、「鎔」「熔」ともに当用漢字に入れられなかったため、同音の「溶」で代用表記されることになった。
溶接を行なうには母材を溶かさなければならない。摩擦接合や圧接では母材が溶融するほどは加熱されない。母材は通常金属である。つまり、一般的に言えば溶接とは複数の金属部品を一体化することを指すが、プラスチックを溶かして接合することをプラスチック溶接と言ったり、最先端の技術ではセラミックスを溶接することも可能になっている。
鋼やアルミニウムのように構造材になるような金属を溶かすにはかなりの高温が必要になる。しかも接合部分だけを溶かさなければならない。そのため狭い部分を集中して加熱できる方法が必要となる。一方で経済性も重要であり、なるべく少ないエネルギーで効率的に溶かすことができなければならない。
主な加熱方法としては電気(電気抵抗)、アーク放電がある。また、ガス、プラズマ、電子ビーム(電子線)、レーザーなどで加熱することもあるが、コストや使い勝手の面から用途が限られている。溶接の古代技法である鋳掛けでは、湯(溶けた金属のこと)を注ぐことで母材の縁を溶かしている。
現在主流なのは、アーク溶接とスポット溶接(抵抗溶接)である。特に、単に溶接と言った場合はアーク溶接を指す場合が多い。スポット溶接は自動車や薄板板金の分野でよく使われている。
母材と母材の間に隙間がある場合は、その空間を補填するために溶加材が用いられる。また、隙間を埋める必要が無くても、強度的に肉厚を増す場合には溶加材が使われる。アーク溶接には通常、溶加材が用いられる。いわゆる溶接棒のことである。スポット溶接は溶加材を使用しない。
溶接は4500年前の青銅器から既に見出されている。弥生時代の銅鐸からも溶接の跡が発見されている。現代では、自動車産業などの巨大産業に関わることから、最先端技術が投入され、レーザー溶接や摩擦攪拌接合といった新しい溶接方法が研究開発され新技術が次々に開発されている。また、高性能なロボットが大量に使われるなど大規模な設備投資が行われる分野でもある。
古くは青銅器の接合に溶接が用いられた。中国の三星堆遺跡(さんせいたいいせき)から大量の青銅器が見つかっているが、これらは紀元前2500年の最古級の青銅器を含み、これらには既に溶接が用いられていた。母材と母材の間に溶かした溶加材を流し込む鋳掛けという方法だとみられている。
鋳掛けは金属製品のひびや穴の補修技術だが、接合にもよく使われていた。鋳掛けでは母材の縁が溶けるまで溶加材を流し込むので、完全な接合が行なわれる。現代のアーク溶接に通ずる技術である。日本の高岡短期大学で三星堆縦目仮面の復元のために、この古代技法が再現された。日本には青銅器そのものの技術と共にこの鋳掛けの方法が伝わったと思われる。弥生時代の銅鐸からも鋳掛けの跡が大量に見つかっている。
またヨーロッパでも紀元前3000年頃から青銅器の遺物から鍛接、リベット、ろう付けなどの加工の痕が見つかりはじめる。
紀元前15世紀ごろ小アジアで鉄が発明される。鉄は延性に富むため、鍛造に向いた金属である。鍛造は金属を整形するとともに鍛えて強度を増す方法だが、熱した金属を重ねて鍛えると金属を接合することが出来た。これを鍛接という。
鉄の接合には鋳掛けとともに鍛接が良く行われた。青銅器でも鍛接は行われたが、鍛接は特に鉄に向いた接合方法である。鍛接は現代のスポット溶接に通じるところが多い。
紀元前10世紀頃、鉄の技術は他の地域に伝わる。鍛接の技術は鉄とともに伝わっていった。旧約聖書にも溶接らしい金属加工の記述がある。日本では紀元前3世紀ころから鉄器が見つかる。鉄器とともに鉄の接合技術が伝わったとおもわれる。河内には古くから鋳物師(いものし、いもじ)の氏族がおり、代々天皇の鏡を鋳造したと伝えられている。おそらく紀元前3世紀頃、朝鮮から来た渡来人と思われる。後年、この氏族の流れを汲む鋳物師や鋳掛け屋(後述)の技術集団が日本各地で活躍することになる。
インドのデリーの郊外に錆びないことで有名な鉄柱の遺跡がある。この鉄柱はグプタ朝のチャンドラグプタ二世によって建立されたインドの最古のイスラム寺院の中に建っており、紀元310年のもので鍛接が使われていることが判っている。ちなみに、この鉄柱にはヒンディー語で「デリー」(不安定なもの)という名前が付いており、この呼称が現在のインドの首都デリーの由来になった。
16世紀のドイツの鍛冶屋。手前に商品が並べられているが、鍛接によって付けられたと思われる部品がある。
弥生時代、青銅器の伝播とともに鋳掛けの技術が日本に伝わったが、この技術が発達し大仏などの巨大青銅器を生むに至った。これらの大仏は鋳物師によって製作された。(奈良の大仏は当時の現物が失われているので何とも言えないが、細部の補修に鋳掛けが利用された可能性はある。鎌倉の大仏からは鋳掛けの形跡が見つかっている。)
日本では鉄は貴重品であったが、たたら製鉄が中国地方で盛んになると、鉄が一般にも普及していった。平安時代末期、鉄が普及してくると田畑の開墾が進んでいく。また鉄製の農具によって面積当たりの米の生産高も飛躍的に向上した。
武士の誕生は武器の需要を生み、それがさらに鉄の加工技術の向上をもたらした。刀剣や鉄砲の発達とともに鉄の加工技法はよく発達した。日本は豊富な砂鉄とそれを精錬するための木材資源にも恵まれており、鉄の加工技術では東アジアでは抜きん出た存在だった。農具にも、中国は見られない高度な鉄の加工技術が使われているとされる。普及したとはいえ鉄製品は貴重品であるため、壊れた鉄製品を修復する需要があり、鉄の接合技術は日本各地に広まった。鍛接・鋳掛けのほかにも、金属の接合にはろう付け・リベットが使われた。
日本の江戸時代には鋳掛屋という行商人がいたという。各地を渡り歩き、鍋釜の類を鋳掛けで補修し日銭を稼いでいた。鋳掛けによる溶接も行われた。彼らは溶けた鋳鉄に鞴(ふいご)で空気を吹き付けることで、鉄を流動化する技術を持っていた。吹き付けた空気により、鉄が燃焼し、その熱で鉄を完全な液体にすることが出来た。同時に脱炭が行われただろう。この方法は山下吹きと言い、16世紀に兵庫県の山下村の鋳物師銅屋新左衛門が発明したとされている。この鋳物師は河内の鋳物師の流れをくむ鋳物師である。転炉を連想させる高度な技術である。やや時代が下るが幕末から長州で製鉄技術が急速に発達したのは山下吹きの技術があったからだと言われている。鋳掛け屋は昭和初期の頃まで各地で見られたらしい。
前述の高岡短期大学のある富山県にも鋳物師の伝統があり、この地域には古い技術がよく伝承されている。現在でもコマツやYKK、新日軽といった金属加工関係の大企業の工場が富山県に多くあるのはこの伝統と無縁ではない。
ヨーロッパでも中世の頃から金属の接合技術が発達する。1540年イタリアの高名な冶金学者ヴァンノッチョ・ビリングッチが冶金学に関する最初の本を発表した。この本を元にルネッサンス時代の技術者は鍛接の技術を発達させていき、やがて近代以降の溶接技術の発展につながっていく。
鉄を溶かすには高温が必要である。母材を直接溶かして鉄を溶接することができるようになるのは、近代に入って電気やガスが使えるようになってからであった。
近代に入ると、電気やガスで集中的に加熱することが可能になる。様々な溶接が次々に開発されるが、主流はアーク溶接と抵抗溶接(スポット溶接)である。アーク溶接は鋳掛けの代替技術として急速に普及していく。薄板板金にスポット溶接が使われるようになると、鍛接の用途は特殊な用途に限られるようになる。
1800年にイタリアの物理学者ボルタが電池を発明したのと同時に電極間に火花が散る現象が認識されるようになった。この発光現象を研究したイギリスのハンフリー・デービーは1807年にボルタ電池を2000個つなげたものを電源とし、水銀に浸した木炭を電極として用いる事で放電を安定的に継続させる事に成功する。デービーはこの放電現象をエレクトリック・アーク (Electric Arc) と名付け、当初は照明用に研究が続けられた。1865年、英国のウェルド (Welde) がアーク溶接についての特許を取得する。1885年、炭素アーク溶接の特許が英国で認可され、この後アーク溶接が普及していく。1907年、被覆溶接棒が発明され、被覆アーク溶接が可能になる。以後アーク溶接は普及の度合いを速めていく。
第一次世界大戦に入ると溶接能力の大幅な向上が強く求められるようになった。溶接技術の優劣が軍事力の優劣に直接結びついたためである。この時期、イギリスでは全ての外板を溶接で建造した船が作られた。アメリカでは溶接の普及が遅れていたが、ドイツ軍のニューヨーク港攻撃で破損した船舶の修復にアーク溶接が用いられ、その威力が認められるようになる。ドイツでは航空機の建造にも既に溶接が用いられていた。
1920年代、溶接ワイヤーが連続的に供給される半自動アーク溶接が登場する。当初はブローホールが発生し品質の確保が困難だったが、溶接を大気から保護するシールドガスが開発され、この問題は大きく改善された。 品質に問題がなくなると、半自動溶接は急速に広まっていく。1930年代に入るとフラックスが開発されアルミニウムやマグネシウム合金などのアーク溶接も可能になる。
日本では1930年に作られた駆逐艦夕霧の一部に初めてアーク溶接が用いられた。本格的にアーク溶接が用いられたのは1931年に作られた海軍の敷設艦八重山である。溶接が用いられることにより、艦船が軽量化し工期が大幅に短くなった。このとき、逆歪みや対称溶接など現代では常識となっている手法が溶接に用いられている。海軍の手により、これらの溶接に関する技術が規格化され、これを境に日本でも急速にアーク溶接が普及していく。
1840年代に電流をスパークさせると金属が接合する現象が発見される。加圧しつつ電流をスパークさせると接合力が飛躍的に高まることが判り、1887年アメリカでフラッシュバット溶接として特許が申請される。同じ年、似たような同じようなしくみのスポット溶接の特許も申請される。特許論争が起きるがスポット溶接はフラッシュバット溶接の一部とみなされ、フラッシュバット溶接の特許が認められることになった。抵抗溶接は鍛接やリベット止めの代替技術として薄板板金の対象に広まっていく。スポット溶接は自動車、シーム溶接は缶詰などに使われた。
1960年以降から、溶接には産業用ロボットが使われるようになる。特にスポット溶接では、その90%以上の作業をロボットが担っていると言われている。日本では一年間に約3万5千台の産業用ロボットが新しく導入されているが、このうち6千台がスポット溶接、5千台がアーク溶接に使われると見られる。溶接ロボットは比較的大きなロボットであり、産業用ロボットでは最大の市場となっている。日本では現在約35万台のロボットが稼動中で、溶接ロボットはそのうち10万台程度とみらる。溶接ロボットのほかに、バリ取りロボット、仕上げロボット、溶断ロボット、塗装ロボットなど溶接の周辺工程で働くロボットがあるが、これはこの10万台には含まれていない。大量生産の現場では溶接の主役は既にロボットであるが、難易度の高い溶接は人が仕上げるほか無く、高い技能を持つ溶接技能者への需要はむしろ増している。
2000年度の国勢調査によると日本の溶接・溶断工の就業人口は24万人弱となっている。これは溶接作業をじかに行っている技能者の数で、2次的に関係している就業者は含まない。産業としてみると、溶接の関わる産業の代表といえばやはり自動車産業があげられる。日本の自動車産業の出荷額は43.2兆円。これは全製造業の出荷額の16%におよぶ。就業人口は直接的に自動車に関わる人だけでも72.6万人。2次的に関わる人も含めると507万人で全就業者数の8.7%に達し、さらに造船や建設機械、建設といった業種が、溶接関係の産業としてこれに加わる。
溶接は巨大な産業に関わるだけに先端技術が惜しみなく投入される。アーク溶接の次世代技術として、電子ビーム溶接、レーザー溶接などが研究開発されている。最新型のスキャニングレーザー溶接装置ではレーザーが遠隔照射され、何も触れることなく鉄板が正確に溶かされていく。スポット溶接の次世代技術としては摩擦攪拌接合などが研究開発されている。溶接ロボットには視覚センサ、力制御、人工知能の搭載が検討されている。
消耗電極式 - 被覆アーク溶接・サブマージアーク溶接・ミグ溶接・炭酸ガスアーク溶接・セルフシールドアーク溶接
溶接の分類には加熱方法で分類したもの、装置のしくみで分類したもの、物理現象に注目したもの、冶金学的なもの、法令に拠るものなど多数の分類方法がある。これらの分類法はいささか観念的なもので、用途に応じて発明された様々な溶接方法に対して、後から当てはめたものなので、あまり厳密に考えなくてもいいだろう。一般には、溶接の主流はアーク溶接とスポット溶接で、それらから専用機として特化したものがあり、さらに非常に特殊なものや実験的なものが少しある、程度の区別が判りやすいだろう。
上記の問題のほかに、どこまでを溶接とするかという定義上の問題も残っている。ろう接や鍛接は溶接ではない、という学者もいる一方で、機械設計者から見ればろう接や鍛接はもちろん、ボルトやリベットも金属の接合方法として重要である。設計者らにとってはこれら(ボルトとか)と溶接を切分けて扱うことはそれほど意味のあることではない。
また、圧力をかけて接合することを圧接(あっせつ)といい、特に加熱してから圧力を加えて接合することを鍛接(たんせつ)という。また母材と違う素材を溶融して接合することをろう付け(ろうづけ)という(接合法を参照)。冶金学には融接という言葉があり、これは液相による接合を厳密に定義する言葉である。冶金学による溶接の定義は融接、圧接(鍛接)、ろう付けが含まれる。
アーク溶接の基本。いわゆる溶接棒を使う溶接のこと。半自動溶接と区別するために手棒溶接や手溶接と言うこともある。風に強いので屋外でのアーク溶接には大体この溶接が使われる。また溶接に必要な機材が簡単で安価であるが、ホームセンターなどで売っているもので一次入力電圧が100Vのタイプは工芸趣味用途以外にほとんど使い物にならない。
アーク溶接の一種。溶接ワイヤとシールドガスが自動的に供給されるので、被覆アーク溶接より作業性が良い。風に弱いので屋内でのアーク溶接に使われることが多い。ガスの種類によりMIG溶接、MAG溶接、炭酸ガス溶接に分類される。最近ホームセンターなどにノンガス半自動溶接機が出回り始めたが、一次入力電圧が100Vのタイプはほとんど使い物にならない
アーク溶接の一種。半自動溶接と同じように溶接ワイヤが自動的に供給されるが、シールドガスではなく、特殊な砂のような粒状フラックスで溶接部を覆い、その中でアークを発生させ溶接を行う。(従って、溶接中には溶接部の状態を見ることができない。また溶接姿勢は下向きに限定される。)フラックスはアークを大気から保護したあと、固まって溶接ビードを保護する。3.2mm以上の太い溶接ワイヤが使われることが多い。そのため極めて高能率で品質の高い溶接になるが、設備が大型化するので、船や建物の鉄骨、パイプラインなど大きな構造物や、圧力容器等溶接部の品質を特に要求する場合の溶接に使われる。
アーク溶接の一種。融点の非常に高いタングステン棒からアークを出し、その熱で母材を溶かす。半自動溶接と同じようにシールドガスを用いる。溶加材を足すことも可能。精密な溶接に向く。高圧パイプや精密機器の溶接などに使われる。高融点のタングステンを電極にしているため電極自体は減りづらいがアーク熱を発生させるだけで溶着金属を付加するために左手で溶接棒を添加しなければならない。両手を使うため熟練が必要であり比較的難易度は高いが非鉄金属に対する溶接に適応力が広い。
抵抗溶接の一種。薄い板金を両側から抑えつつ電気を流し、その抵抗熱で板金を溶かし接合する。主に自動車のボディの接合に使われている溶接。溶接時間が短く生産性が高い。大きなものを人が扱うのは大変なので、産業用ロボットが使われる。
抵抗溶接の一種。ローラーの形をした電極で複数の板金を抑えると同時に、抵抗熱で溶接を行う。スポット溶接と違い、線状の溶接が可能。薄い板金を連続的に接合する。缶詰やジュースの缶などに使われている。
圧接の一種。圧接は固相溶接とも言う。真っ赤に焼いた金属を重ねて、ハンマーで叩いて接合する。古い技法で青銅器時代から見られる。現代でも鋼管や鎖などの製造に普通に使われる。
母材より融点の低い金属で接合する方法。ろう付け(融点が450度以上の硬ろう)、はんだ付け(融点が450度以下の軟ろう)貴金属アクセサリーでは部品同士の固定にろう付(ろうづけ)・ろう接(ろうせつ)を用いることが多い。古い技法で、古代エジプトの装飾品からも見つかる。加熱する方法により、アークろう付、抵抗ろう付、炉内ろう付、トーチろう付などがある。
可燃性ガスを燃焼させて溶接部を加熱する。ふつうはアセチレンガスと酸素を使う。溶接速度が遅く、アーク光が無いので溶接部が見やすいので、溶接不良が発生しにくいと言われている。そのため高圧力のかかる油圧、空圧の配管などに使われる。溶接速度が遅く、機材の取り扱いにも免許が要るなどの短所があるため、あまり一般的な溶接とは言えない。関連資格に(ガス溶接作業者)などがある。またガスの燃焼熱により溶融接合をするわけであるが添加盛り上げする溶着金属は左手で供給しつつ進行せねばならず、両手を使うためアーク溶接より熟練を要するが発生温度が比較的低く温度調整も容易で薄板の接合に適している
テルミット法とも言う。アルミニウム粉末と金属酸化物を混ぜて溶接部に詰める。そこで還元反応を生じさせ、その反応熱で母材を溶かし、還元された金属が溶加材になるという仕組み。
溶接部を銅金で囲いながら連続的に溶接を行う。厚板の突合せの縦なみ溶接に用いることが多い。設備は大掛りで、どうしても溶接部を水平に出来ない大型の化学プラントやタンク、大型船の溶接に用いる。
溶接部を鋳砂で囲い、母材の縁が溶けるまで湯(溶けた溶加材)を流し込む。古い技法のひとつで青銅器時代の遺物からも鋳掛けの跡がみつかる。今ではほとんど見ることはないが、エレクトロスラグ溶接やサブマージアーク溶接にこの古代技法の面影がある。
電子ビームを溶接部に当てて加熱する溶接。入熱量が少なく、非常に深い溶け込み深さが得られるので精密な溶接に向く。異種金属の接合も可能。ただし真空中でしか溶接できないので、コストは非常に高い。コストを無視できるような特殊な製品でないと使うことは出来ない。人工衛星や深海探査艇、高エネルギー加速器の部品などに使用例がある。
レーザーで溶接部を加熱する溶接。レーザービーム溶接とも言う。入熱量が少なく、非常に深い溶け込み深さが得られる。電子ビーム溶接と違って、シールドガスを使えば大気中でも溶接可能。現在はレーザー光源にYAGレーザーとCO2レーザーを使うものがある。YAGレーザーは光ファイバーが使えるので、産業用ロボットに取り付けて使うことができる。CO2レーザーは光ファイバーを使うことが出来ないが、大きな出力が得られている。既にシーム溶接やスポット溶接の代替技術として導入が進んでいる。さらに、中厚板の溶接が出来るようにレーザー光源の大出力化の開発が進んでいる。自動車部品、航空部品などで応用が進みつつある。
アーク溶接の一種。タングステン棒からアークを出し、水冷ノズルの穴を通してアークを細くしぼり、プラズマジェットとして溶接部にあててその熱で母材を溶かす。半自動溶接と同じようにシールドガスを用いる。溶加材を足すことも可能。精密な溶接に向く。TIG溶接と似ているが、タングステン電極がノズルより奥にあり、プラズマがノズルにより密度が高く安定しているという利点がある。使い勝手と経済性の問題から、肉盛溶接などに用途が限られている。
圧接の一種。回転する円筒状の工具を強い圧力で板金に押し当てて、その摩擦熱と攪拌力で接合する。現在の主な溶接が母材や溶接棒を溶融しながら接合する液相接合であるのに対し、FSWは母材を溶融せずに塑性流動を利用した固相接合である。固相溶接ともいう。異種金属接合が可能。FSWは広義の溶接に数えられる場合もあるが、伝統的な溶接の概念とは異なる接合法であるため、溶接とは別のものと一般的には考えられている。スポット溶接の代替技術として開発、導入が進んでいる。
圧接の一種。摩擦攪拌接合と似るが、母材自体を回転させる。異種金属接合が可能、母材への熱影響が少なく、使用エネルギーが少ないなどのメリットがある。しかし、母材の形が少なくとも片方は円形をしている必要があり、断面形状の制約が厳しい。
圧接の一種。溶接部に超音波で振動する工具を押し当てて、母材が互いに摩擦することにより接合を行なう。断面形状の制約はないが薄いものしか接合できない。
特に建築物・船舶の鉄骨などの大規模構造物の溶接欠陥は、そのまま構造面での致命的脆弱性となりうる。実際に船舶の沈没・橋梁の崩落・原子力発電所の配管破損などで、原因として溶接不良が指摘されたケースも多く、シビアな品質管理が要求されている。
溶接欠陥には、目視で確認できないケースが多い。表面に現れないひび割れなどは何らかの方法で内部構造を探らなければ発見できない。以下に、実用化されている溶接検査技術を挙げる。
超音波が金属内部や表面において伝播・反射する様子から探傷を行う。内部・表面両方に有効な非破壊検査である。
目視で確認できないような微細な傷に、色のついた浸透材をしみこませて検査する。表面のみに有効な非破壊検査である。
人間の目視による検査である。表面に出た欠陥しか発見できず、また微細な傷は見逃すことがあるが、所定の寸法を満たしているか否かを測定するなど基本的なチェックは人の目で行う。
金属に切り欠きを作り、ハンマーを振り落として靱性を調べる試験方法である。溶接部分の靱性検査にも用いられる。
建築物・橋梁・船舶・貯蔵塔などが突然大きな破壊を起こすというケースでは、しばしば溶接不良が原因となっている。構造上重要な部分の溶接不良から、構造物全体が倒壊するということもある。また、低温時に特に起こりやすくなる脆性破壊では、一箇所で起こった破損が、連続する溶接部分全体に瞬時に走るため、船体・巨大タンクなどが突如折れるように崩壊するという事故が発生している。以下に、広く知られた事例を挙げる。
1936年、大日本帝国海軍の艦隊が台風に遭遇し、複数の艦艇が破壊された海難事故である。溶接不良が原因のひとつとして指摘された。(→第四艦隊事件に詳述。)
第二次世界大戦中にアメリカで量産された貨物船・リバティ船が脆性破壊を起こすという事故が1,031件(建造されたリバティ船の総数は2,708)報告されている。溶接不良と、冬季の海の冷たさから起こった脆性破壊が原因であった。この事故を契機に、靭性に優れた金属の開発などが進み、溶接技術の安全性は向上した。この事例は、失敗の検証を通じて技術を改良した事例として、技術史・失敗学においてしばしば言及される。[1]
1994年、大韓民国・ソウル市内の漢江にかかる道路橋・聖水大橋が突然崩落し、通行中の車両が落下、死者32名の惨事となった。吊り桁の鉄骨トラスに溶接不良があったが、検査が不十分であり見逃されていた。過剰な予算削減や品質管理の杜撰さなどが指摘され、ソウル市の道路施設関係者の一部は業務上過失致死等で逮捕されている。この事故がきっかけで韓国ではインフラ施工技術への不安が高まり、金泳三大統領は全国の土木構造物の一斉点検を命じた。[2]
1998年、大西洋航海中の貨物船フレア号が嵐に遭遇し、船体が真っ二つに割れて沈没し、死者21名の海難事故となった。船体の溶接不良があり、さらに低温という環境の悪さもあいまって脆性破壊を起こしたことが判明した。

 

[ 1269] アーク溶接 - Wikipedia
[引用サイト]  http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%82%AF%E6%BA%B6%E6%8E%A5

アーク溶接とは電気の放電現象(アーク放電)を利用し、同じ金属同士をつなぎ合わせる溶接法。母材と電極(溶接棒、溶接ワイヤ、TIGトーチなど)の間に発生させたアークによってもたらされる高熱で母材および溶加材(溶接ワイヤ、溶接棒)を溶融させて分子原子レベルで融合一体化する接合法であり接着とはまったく違う。電気溶接とも言われることもあるが、これには抵抗溶接も含まれる。
材料によっては高熱に曝されると性質が変化したり、劣化する恐れがあるので、溶接を行う際は、JIS規格に規定された耐久性が得られるか検討する必要がある。また、アーク溶接を行う際は労働安全衛生法第59条3項「アーク溶接」による特別教育を修了する必要がある。
被覆アーク溶接で使用する溶接棒は、芯線より発生したアークを、被覆材から発生したガスでシールドし、大気中の窒素や酸素が溶接部に混入するのを防止している。この他、被覆材の成分は、溶接金属の脱酸精錬や、スラグになってビード形状の成型などの働きをする。被覆アーク溶接は手溶接、手棒溶接と言うことがある。被覆アーク溶接での進行方向は、右利きなら左から右へ、左利きなら右から左へ、いずれの場合も進行方向に対して五度から十度傾けて傾けた方向に進む。
連続的にワイヤやガスを供給する溶接を手棒溶接に対する意味で半自動溶接と言う。被覆アーク溶接とほぼ同じ用途の溶接として半自動アーク溶接がある。被覆アーク溶接(しばしば手棒溶接ともいう)はいわゆる溶接棒を溶接材として使うが、溶接棒は比較的短いためしばしば短くなった溶接棒を交換する必要があり、大量に溶接を行うには必ずしも適していなかった。このため開発されたのが溶接材として非常に長いワイヤーを使う半自動アーク溶接であり、単にアーク溶接と言えば、半自動アーク溶接のことを指すほど一般的である。半自動溶接はガスシールドアーク溶接なので風に弱く、屋外では使用しにくい。おもに工場内で使われる。詳細は半自動アーク溶接の項目を参照のこと。
ティグ溶接、ミグ溶接、マグ溶接、炭酸ガスアーク溶接では、電極(溶接ワイヤ)から発生させたアークを、アルゴン・炭酸ガス等のガスで覆い、アークの安定、溶融金属中に大気が混入しないようにする目的がある。この為に使用されるガスをシールドガスと称する。ミグ溶接、マグ溶接、炭酸ガスアーク溶接は溶接ワイヤやシールドガスの連続供給が可能で、溶接の中ではスポット溶接と並び、最も自動化が進んでいる。これらガスシールドアーク溶接では進行方向にノズルを向けて、右利きなら右から左へ、左利きなら左から右へ進む方法を前進法、逆に進行方向と反対にノズルを向けて進む方法を後退法と呼び用途やワーク形状によって使い分けられている。
真っ直ぐ連続してビード(溶接痕の盛り上がり)を置くことを(ビードは置くと表現するのが正しい、英語ではビードオンプレートと呼ぶ)ストレートビードと呼び比較的薄い材料に適している。また進行方向に対して振幅を与えつつ進んで置いたビードをウィービングビードと呼び多層盛溶接などの比較的厚い板に適している。(ウェービングではなくウィービングが正しい呼称、意味は縫い合わせるようにであり、文字通り二つの板を縫い合わせるように進行する)
アーク溶接では電力により溶接棒もしくは溶接ワイヤを溶融させる。アーク溶接を行うにはこの電力、つまり電流と電圧のコントロールがきわめて重要である。電圧が低い場合、右図(1)のようにアーク長は短くなる。逆に電圧が高い場合、右図(3)のようにアーク長は長くなる。また、同じ電圧で電流が増せば、右図(1)のようにアーク長は短くなる。逆に同じ電圧で電流が減れば、右図(3)のようにアーク長は長くなる。
普通の伝導体の場合、電流は電圧に比例して増大するが、アーク溶接の場合は電流は電圧に比例しない。電圧を上げるとアークが大きくなり、その分抵抗値が増すからである。この性質を利用してアーク溶接の溶接機には、負荷電流と負荷電圧が別々に設定できるように、それぞれにつまみがついている。これは以下のようなしくみになっている。
アーク溶接の溶接機(電源)は、電流と電圧のコントロールの仕方により、定電圧特性のものと垂下特性のものの2種類がある。
定電圧特性とは、負荷電流が増加しても負荷電圧が一定となる性質のことである。実際には負荷電圧を一定の値に保つように、負荷電流が自動制御される。定電圧特性の溶接機は主に半自動アーク溶接に使われている。
半自動アーク溶接の溶接機で電流の設定値を増すと、すぐに負荷電流が増えるのではなく、まず送給装置からのワイヤーの供給速度が増す。このときワイヤーによってアークから融解熱が奪われるため、アークが小さくなる。アークが小さくなると負荷電圧が下がるが、溶接機はこれを検知し自動的に電圧が元に戻るまで負荷電流の量を増やす。
逆に溶接機の電流の設定値を減らすと送給装置からのワイヤーの供給速度が減る。するとワイヤーによって奪われる融解熱が減るためアークが大きくなる。アークが大きくなると負荷電圧が上がるが、溶接機はこれを検知し負荷電圧が元に戻るまで負荷電流の量を減らす。
要するに、半自動アーク溶接の溶接機はワイヤーの供給速度によって電流をコントロールするしくみになっており、実際の電流値(負荷電流)は定電圧特性を持つ電源の平衡機能によって制御されている。
垂下特性とは、負荷電流が増えると負荷電圧が低下する特性を意味している。これは内部抵抗値を持つ電池や発電機など一般的な電源の持つ性質である。溶接では電流の高い領域、すなわち、電圧が変化しても電流があまり変化しない領域が使われる。垂下特性の溶接電源は主に被覆アーク溶接やサブマージアーク溶接などに使われる。
溶接では電流の高い領域、すなわち、電圧が変化しても電流があまり変化しない領域で使うようになっている。垂下特性の溶接電源の場合、アーク長が変化しても負荷電流の量は一定なので溶接棒の溶ける量はあまり変わらない。発生する熱量が変わらないのでアーク長はすぐに元に戻る。従って、アークの長さが変化しても電流はあまり変化しないので、垂下特性の溶接電源なら手作業でも安定した溶接が行える。
半自動アーク溶接では、電流の設定値はそのままワイヤーの供給速度になる。このワイヤー速度はかなりの速さで、溶接の結果に大きな影響を及ぼす。電流を増やした場合、ワイヤー速度が増し溶融金属の運動量が増えるので、深く溶け込む。また、同じ電流値でもワイヤー径が細くなると、時間あたりの溶融量を保つためにワイヤー速度が上がる。その結果、ワイヤーの母材へのぶつかる速度が増す。従って、細いワイヤーほど深く溶け込みやすい。
深い溶け込みはアーク溶接では一般に望ましいこととされるが、液体が激しく動くことになるので、その分スパッタなど増えることにもなるので注意しなければならない。
溶接棒や溶接ワイヤが溶けた溶融金属が母材上に移動することを溶滴移行という。この溶滴移行の様子は電圧、電流、シールドガス、溶接材の種類などによって著しく変化する。
低電流の状態では、アーク熱により溶融した溶加材(溶接棒のこと)の先端部が溶融した母材に接触し(短絡)、アークが消えるとともに溶加材から母材へと流れるように溶融金属が移動する。これを短絡移行と言う。
炭酸ガスアーク溶接における高電流の状態では、溶融した溶加材は大きな滴になって移行し、一部の溶融金属が飛び散るなどの現象が生じる。これをグロビュール移行という。飛び散った溶融金属はスパッタといい、溶接ビードの回りにこびり付き、溶接の外観を悪くする原因となる。しかし、うまくコントロールできればグロビュール移行は高速な溶接ができるという長所がある。
MAG溶接における高電流の状態では、溶加材から母材への溶接金属の移動が非常に小さい滴の状態で行なわれる。これをスプレー移行と言う。スプレー移行はスパッタが少ないため外観が良く、かつ溶け込みも深く、能率も良い溶接ができる。
アーク溶接で溶融している金属に大気が接すると、大量の窒素が金属の中に溶け込む。溶融金属が凝固するときに、この窒素が一気に析出し泡となってそのまま固まってしまう。この状態をブローホールといい、この状態になると溶接部分の機械的強度が著しく低下する。代表的な溶接欠陥である。水を急速に氷らせると、炭酸ガスが析出して真っ白な氷になるが、それと同じ現象である。
そのため、空気中でアーク溶接を行うには何らかの方法で空気とアークや溶融池を遮断する必要があり、シールドガスが用いられている。シールドガスとしては二酸化炭素やアルゴンを主成分とし、時にはヘリウム、水素、酸素などを添加したガスが使われる。
日本では二酸化炭素を使った炭酸ガスアーク溶接が主流だが、欧米ではアルゴンやヘリウムを使ったマグ溶接とミグ溶接が主流で、炭酸ガスアーク溶接による製品は二流品とされている。
シールドガスはその名の通り溶融金属を大気から保護する目的もあるが、それ以上にアークそのものの素材になるという重要な機能がある。アークとはプラズマの一種で、気体が電離したものである。電離とは高温により原子から一部または全部の電子が飛び出している状態になっている。電子が電離することをイオン化、あるいはプラズマ化などと言う。電離した電子が電荷を運ぶので、アークおよびプラズマは気体であるにもかかわらず、電気を通す伝導体である。
アークとプラズマは厳密に使い分けされている言葉では無いが、慣例的に通電状態にあるプラズマをアークと呼ぶことが多い。アークは一般に強い紫外線や熱線を含む激しい光線を発する。
誤解されることが多いが、アーク溶接のアークは気化した金属ではない。シールドガスがプラズマ状態になったものである。プラズマは不安定な状態で、大気の中では急速に冷えて普通の気体に戻ってしまうが、アークは電流が通ることで自ら発熱し、その熱でプラズマ状態を維持することができる。アーク溶接のアークは15000度くらいの超高温になっており、鉄などは簡単に溶融してしまう。
最初のアークは、最初に溶加材(溶接棒や溶接ワイヤのこと)が母材とスパークした瞬間に、その熱でシールドガスがイオン化することによって生じる。アークは電気を通すため、一度アークが生じるとアークを介して電気が流れるようになる。するとアーク自体が発熱し、周囲のシールドガスをイオン化する。アークはある段階まで成長すると一定の条件下で安定状態に入る。そのアークが溶加材や母材を溶融させていく。
シールドガスはアークを保護するとともに、アークそのもののベースである。従って、シールドガスの成分はアークの状態を大きく左右し、さらに溶接の結果に大きな影響を与える。特に二酸化炭素はアークの特性を大きく変化させる物質である。
シールドガスに使われる物質は二酸化炭素、アルゴン、ヘリウム、水素、酸素などである。一般的なのは二酸化炭素とアルゴンである。日本では二酸化炭素だけを使うケースが多い。欧米ではアルゴン、もしくはアルゴンと二酸化炭素を混ぜたシールドガスを使うのが普通である。また、米国ではヘリウムも比較的多く使用されているようだ。
アルゴンは空気中に含まれているので、沸点の違いを利用して液化した空気から生産される。しかし、アルゴンと酸素は沸点が近い(それぞれ-186℃と-183℃)ので、分離が難しい。そのため、安物のアルゴンを使うと溶接のスラグが多くなり、欠陥が発生しやすい。
CO2は化合物であり、CO2が電離してプラズマになることは無い。CO2はプラズマ状態になる前に、高熱により酸素と炭素に分かれる分解を起こす。その酸素と炭素がさらに電離してプラズマとなり、それがアークを形成する。
シールドガスはアークや溶融金属を空気から保護するために使うのだが、CO2から生じた酸素、しかも電離した活性な酸素が溶けた金属と化学反応を起こすのではないか、と疑問が生じる。幸いなことにアークの中には活性化した炭素もあり、炭素は鉄よりイオン化傾向が強いので酸素と結びつきやすい。つまり鉄と酸素が結びつく前に炭素と再びくっついてしまい、鉄は酸化しない。逆に何らかの原因でアークの中の酸素が不足すると、鉄と炭素が化合し、鉄がもろくなる。還元反応といい、転炉で鉄を精錬するのと理屈は同じである。
しかし、やはり少しは鉄と化学反応を起こして酸化鉄を生じるため、CO2で溶接するとアルゴンだけで溶接するより多くスラグが出る。スラグとは溶接ビードに浮き出てくる酸化鉄などの不純物である。液体の鉄は非常に重いため、酸化鉄などの不純物は鉄が冷えて固まる前に表面に浮いてくるのでほとんど問題になることはない。しかし溶接条件によっては溶接内部にスラグが入り込み、溶接欠陥を生じてしまうこともある。なお、溶接金属が炭素よりイオン化傾向の強いアルミのような金属ではCO2は使えない。
上記のようにCO2は化学反応を起こすため、炭酸ガスをシールドガスとして使うと、アークの中にはアルゴンガスだけのときよりも複雑な現象が生じる。CO2は酸素と炭素に化学分解するときに周囲から大量の熱を奪う。そのため溶融金属の温度も下がり、その表面張力と粘性が大きくなる。その結果、比較的大きな溶滴が生じ易くなり、スパッタが生じやすくなる。
これらのため、CO2で溶接するよりアルゴンガスなどで溶接したほうが、一般的には溶接の品質が良いと言われる。また、CO2は高熱で化学分解すると炭素原子1個、酸素原子2個で合計3個の原子に変わり、急激に体積が膨張する。さらに化学分解によりアークから熱量が奪われる。その結果アークが圧迫されて細く鋭くなり、狭い範囲に熱が集中しやすくなる。これを熱的ピンチ力という。その結果、母材に深い溶け込みができやすく、かつ速い溶接が可能になり、溶接対象物への熱影響が少なくなる。これらの現象は溶接に対して、溶接欠陥や外観を悪くするという悪い要素と、溶け込みが深く、熱影響が少なく、速い溶接ができるという良い要素を与える。
そのため一概にはCO2は悪いとは言えず、目的によってはアルゴンガスより良い結果が得られる場合もある。また、アルゴンガスとCO2を混ぜて使い、両方のいい面を利用する溶接があり、これをマグ溶接という。日本では、CO2が20%、アルゴンが80%の比率のMAG溶接がもっとも一般的な比率である。
さらに、アルゴンガスとヘリウムガスでは微妙に異なる。シールドガスのメーカーはこれらのガスを混ぜる比率を研究し、目的別に最適なシールドガスを売り出している。高速溶接のできるシールドガス、溶接品質の良いシールドガス、深い溶け込みのシールドガスなどが販売されており、中には通常の4倍以上の速度で溶接できると謳うシールドガスもある。
金属を一部分だけ加熱し冷却すると大きく歪む。そのため溶接を行うと溶接された部材は大きく歪んでしまう。
金属を一部分だけ加熱すると当然その部分は膨張する。しかし周囲は冷えたままなのである。すると、膨張した部分は周囲から圧縮を受ける形になる。その結果、加熱された部分は冷えたままのところより柔らかいので、加熱された部分は縮む方向に塑性変形することになる。さらに、この一部分だけ加熱した金属を常温まで冷却すると、加熱を受けた部分は元の体積より小さくなり、周囲を強烈な力で引っ張ることになる。この結果、製品全体が大きく歪む。これを熱歪みと言っている。また加熱を受けた部分の周囲には強い引張応力が残る。これを残留応力といい、最終的な製品の強度に大きく影響する。
アーク溶接では金属が溶融するまで加熱するので当然大きな熱歪みと残留応力が発生する。スポット溶接もアーク溶接ほどではないが熱歪みと残留応力が発生する。
また、溶接の周囲では母材の組織の変化が発生する。金属は規格ごとに結晶構造や化学組成が決められているが、溶接のように急激な加熱と冷却をしてしまうと、これらの結晶構造や化学組成が変化し、素材の強度を大きく変化させてしまう。これらの結晶構造や組成変化、熱歪み、残留応力を総称して熱影響と呼んでいる。
普通は溶接部分は焼き入れのような状態になり、周囲の熱影響を受けていない部分より頑丈になってしまう。頑丈になれば良いのではないかと思うかもしれないが、実際にその溶接製品に負荷をかけると、頑丈な溶接部とそうでない普通の部分の境界辺りに応力が集中する。これを応力集中というが、これがあまりに大きいと破断に至る。よく、溶接の周囲で破断が多いため、ゴテゴテと補強板を貼り付けたり、板厚を増したりする設計図を見かけるが、これはあまり効果的な方法ではない。
膨張係数の異なる材料をいきなり溶接すると、どちらかが溶接中に割れたり、冷却時に割れたりする。このため製品全体を溶接前に加熱する予熱や、ゆっくり冷す後熱が行われることもある。また、溶接製品は溶接を終えると全体としては小さくなるが、それをあらかじめ予測して大きく材料を作っておく対策も行われる。
右図はFe-C状態図と言い、縦軸が温度、横軸が炭素量となっている。鉄鋼は温度と炭素量により相変化を起こし、物理的特性の違う組織に変化する。右図は十分に冷却時間を取った場合の鉄鋼の相変化を表している。溶接の場合は急激な温度変化を伴うため、右図に示される相変化を激しく遷移し、加熱と冷却の仕方によって様々な組織に変化する。
そのため一口に鉄鋼と言っても様々な種類があり、アーク溶接に適さない種類の鉄鋼もある。また、溶接可能な鉄鋼でも、溶接するにあたって特別な処理が必要となるものもある。このような溶接に対する材料の性質を溶接性と言う。一般的に硬い材料ほど溶接しにくい。
鉄をアーク溶接すると、溶融部は液相から急激に固相に移行し急激に冷却されることになる。また溶接周辺部も急激な加熱のあと急激な冷却を受けることになる。鉄はこれらの熱影響によって成分や結晶構造が変化し、鉄の種類によっては強度が不足したり、変形したり、亀裂が生じたりする。鋼材をある程度まで熱してから急激に冷却すると、いわゆる焼きの入った状態になって硬化を起こす。鋼材には炭素が含まれているためで、この炭素が鉄と化学反応を起こしたり、結晶構造を変化させるなど結果として硬化が起きる。鉄鋼が硬くなると脆くなるため機械的強度が低下することがある。そのため、一般に炭素が少ない鋼材のほうが溶接性が良いとされる。
鉄を硬化させる物質は炭素だけではなく、マンガンやシリコンなども硬化の原因となる。これらの物質の影響を炭素の影響に換算したものを炭素当量と言う。
JIS規格では、一般構造用圧延鋼材のSS400という鉄鋼が軟鋼に相当するが、JIS規格ではリンと硫黄の成分のみが規定されており、炭素や他の成分は規定されていない。従ってメーカーやロットによっては同じSS400でも溶接に適さないものもある。
そのため溶接用に規定された軟鋼としてはSM材とSN材が規定されている。SN材は特に建築用として規定された材料で、大地震などで十分な強度が得られるように成分調整と検査が義務付けられた鋼材である。軟鋼は特に溶接性の悪い材料ではないが、比較的柔らかい鋼材のため、溶接量が多いと大きな歪みが生じる。そのため形状によっては縮み代や逆歪み、冷却などの対策が必要になる。
余談だが、日本では鉄と鋼は一緒くたにされているが、日本以外では全く違う物質として認識する地域もある。日本のSS400だと規格上、国によっては鋼として分類されずにクズ鉄同然の見方をされることがある。
高張力鋼とはJISに規定された鉄鋼で、490N/mm2以上の一般構造用鉄鋼を言う。溶接性、切り欠きじん性などに配慮することもJISに規定されている。溶接性も規格に入っているため溶接性は悪くないが、硬いため形状と溶接量によっては亀裂が生じる場合もある。また軟鋼に比べると炭素が多いため、焼き入れ性が強く、アーク溶接を行うと多かれ少なかれ焼き入れ硬化を起こす。強度的な問題が生じる場合は、予熱や後熱処理などが必要となる。
炭素や合金を少なくし、溶接しやすい高張力鋼とするため、普通の圧延鋼板よりも低い温度で精密に温度制御しつつ圧延した鋼材である。組織が微細なため、炭素当量が少なくても普通の圧延鋼板なみの強度がある。炭素当量が少ないので熱影響部の硬化が少なく溶接性は良好である。
TMCP鋼は溶接用に開発された素材だが、ほかにも様々な鋼材が溶接用に開発されている。特に低温に強いものや、高温につよいもの、サビに強いものなど目的に応じたものがある。
いずれの溶接も二つの材料に均等に熱を加えることが基本であり断面方向の狙い角度が要である。誤った溶接法・溶接材料を適用したり、母材に与える熱量が過大または過小であった場合、期待する強度が得られず部材が破断する。
突き合わせ継ぎ手は別名、バット溶接とかIバット(アイバット)などと言う。アーク溶接の場合、ピッタリくっついた突き合わせ継ぎ手は施工しにくい。そのため、ウラガネ(裏金または裏鉄)という薄いプレートを裏側に付け、突合せの間隔を板厚以上に取るのがふつうである。
開先継ぎ手は溶接しやすいのだが、開先を作るための加工コストが必要になる。また図のような両開先継ぎ手の場合、母材の薄い部分が溶け落ちてしまうため、ウラガネを使うのが普通である。
重ね継ぎ手、隅肉継ぎ手は中厚板の溶接で最も一般的な溶接である。図には無いが片側開先の隅肉継ぎ手も多い。
アーク溶接の用途は広く、自動車、列車、船舶、航空機、建築物、建設機械など、あらゆる金属構造物にごく一般的に使われていると思ってよい。母材は鉄鋼が多いが、アルミやチタンなどほかの金属にも普通に利用される。
アーク溶接は強烈な紫外線を発生する。その強さは、アークから50cm離れた皮膚に数秒間アーク光を曝しただけで炎症を起こすほどであり、日光の比ではない。長時間アーク光に曝した場合、火傷、水ぶくれ、シミなどの症状が発生する。何度も至近距離で強烈なアーク光に皮膚を曝すと最悪皮膚癌に至る場合もある。通常、溶接の光では日焼けと同じような炎症を起こし皮が剥けるものの、残念ながら小麦色の肌にはならない。(しかしシミはできる。)裸眼でアーク光を見た場合、電光性眼炎(電眼炎)という目の炎症を起こす。何度も電光性眼炎になると視力の低下や最悪の場合失明に至る。
また金属ヒュームという酸化鉄からなる煙を発生し、大量に吸った場合、金属ヒューム熱やじん肺などの深刻な病気の原因となる。ヒュームには一酸化炭素やオゾンも混ざっており、換気には十分注意しなければならない。
強力な紫外線を避けるため、アーク溶接作業には長袖、長ズボンの作業服、溶接面、皮手袋が必須である。さらに、ヒュームを避けるために防塵マスクが必須である。また必要に応じて安全靴、スパッツ(足カバー)、厚手の耐熱エプロン、ヘルメット、ゴーグルなどを着用しなければならない。さらに場合によってはワセリンや熱焼け防止クリームなどの表皮保護剤(ゲル状クリーム状の物が望ましい)を顔面や頸胸部周囲などに事前塗布しておく事が望ましい。また、溶接作業者の更衣室、休憩室などには衣服に付いた粉塵を吸い取る装置や、空気清浄器などを設置することが望ましい。

 

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